海外の動向

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取り組み概要

 イギリスでは、政府組織である環境・食料・農林地域省(DEFRA)およびカーボントラスト社、英国規格協会(BSI)がカーボンフットプリント制度に関わっている。カーボントラスト社は、政府DEFRA出資の非営利企業で、主に省エネ技術の開発に携わっている企業であるが、今回業務の一部として、カーボンフットプリントの算定方法構築などに取り組むことになったとしている。

 これら各組織の役割をまとめたものが下図である。赤枠点線内にあるように、DEFRAとカーボントラスト社が、民間企業を巻き込んでパイロットプロジェクトを実施しながらカーボンフットプリント算定方法を開発してきた。パイロットプロジェクトでは、算定結果を実験的に市場で表示している。つまり、イギリスでは算定ルールの確定に先行して実際の市場で表示に関する実験をしている。こうして策定してきた算定方法を英国での共通規格(PAS)にするため、2007年5月に、DEFRAとカーボントラスト社は英国規格協会(BSI)とともにこの算定方法に基づいて、共通規格「PAS2050」の開発に着手し、2008年10月末にこれが完成した。

 また、下図の緑点線枠内の表示は前述の「算定」とは切り分けたかたちで、「Code of Good Practice」という表示に関する要件としてカーボントラスト社によって取りまとめられた。実務レベルでは、現在カーボントラスト社の子会社であるカーボンラベル社が表示に関するサービス・ライセンス付与などを有償で行っている。

最新の調査結果はこちら (出典:2010年(平成22年)1月28日(木)第3回第三者認証スキーム検討委員会 資料3 海外調査報告書サマリー)


▼ CFP制度構築のスキーム
CFP制度構築のスキーム

▼ CFP制度構築の流れ
CFP制度構築の流れ

▼ 公表された資料
No.
名称
概要
策定組織
URL
1
PAS2050:2008
Specification for the assessment of the life cycle greenhouse gas emissions of goods and services.
・製品のライフサイクルGHG排出量の測定方法
Carbon Trust,
DEFRA,BSI
2
Guide to PAS 2050
How to assess the carbon footprint of goods and services
・PAS2050実施のための実践的ガイダンス
Carbon Trust,
DEFRA,BSI
3
Code of Good Practice for Product Greenhouse Gas
Emissions and Reduction Claims Guidance to support the robust communication of product carbon footprints.
・PAS2050を使用して測定された製品のライフサイクルGHG排出量削減についての要件
・製品関連のライフサイクルGHG排出量と、排出量削減についての表示に関する要件
Carbon Trust,Energy Savings Trust(以下は支援)Arup,One World Standards,the Pacific Institute,E4tech
4
Product Carbon footprinting
new business opportunity Experience from leading companies
・パイロットプロジェクトにおけるビジネススタディ
Carbon Trust

算定について

 カーボンフットプリント算定は、PAS2050に基づいて行う。下表はPAS2050の項目内容についてまとめたものである。同規格では、システム境界、1次データ・2次データ、排出の配分(アロケーション)などについてのルールが定められている。実務レベルでは、同時に公表された「Guide to PAS2050」に算定の事例などが記載されており、有用なものとなっている。

▼ PAS2050の項目と内容
No.
項目
内容等
1
適用範囲
(一般事項)
2
引用規格
(一般事項)
3
用語及び定義
(一般事項)
4
原則及び実施
アセスメントの一般的要求事項は基本的にはISO14040、14044に従う。また14064-1の原則が示されている。
5
排出源、オフセット、及び分析単位
GHG排出源で含むべきもの、製品の炭素貯蔵、オフセット、土地利用変化の扱いなどが示されている。
6
システム境界
ライフサイクル各段階(原料、製造、輸送、保管、使用、リサイクル、最終処分等)のシステム境界、システム境界に含まないもの等が示されている。
7
データ
主要活動データ(企業所有データ)、2次データ、他データの取扱に関する一般的ルールが示されている。
8
排出の配分
リサイクル、再生可能エネルギーからの排出量の配分、複数製品輸送時の配分方法他ルールが示されている。
9
製品の温室効果ガス(GHG)排出量の計算
GHG排出量の計算の一般的手順が示されている。
10
適合の宣言
宣言の範囲、適合性評価のタイプ(認証[第三者認証]、自己妥当性確認)等が示されている。

▼ CFP算定5つのステップ         クロワッサン(パン)のプロセスマップ(例) - (出典)Guide to PAS 2050,カーボントラスト社CFP算定5つのステップ クロワッサン(パン)のプロセスマップ(例)

表示について

 企業はPAS2050に基づいて、CFP算定をカーボントラスト社などと共に行う。表示が必要な場合には、別途カーボントラスト社およびカーボンラベル社が「Code of Good Practice」に基づいて表示内容を検証することでラベル表示が可能となる。
  ラベル表示内容については、必須の表記とオプションの表記があり、下図にあるように、「①カーボントラスト社との取り組み」、「②マーク※1およびCFP数値※2」、「③2年以内のCFP削減コミットメント」の3つが必須の表記となっている。オプション表記では、使用方法の違いによる消費者のCFP削減について、排出量削減割合、他商品との比較など各社さまざまな追加情報の掲載ができるようになっている。
※1 当初は下矢印の向きのマークであったが、最新は足形のマークのみとなった。
※2 写真では2種類の数値(360gと240g)があるが、大きい字体のもの(360g)がその製品のカーボンフットプリントを示す。小さい自体のもの(240g)は従来品等のカーボンフットプリントを示している。

▼ Tesco社オレンジジュースのラベル表示内容
Tesco社オレンジジュースのラベル表示内容

 「Code of Good Practice」に公表のためのテンプレートが定められており、これによると、PCR情報、どのエリアでの削減か、CFP算定に利用した主要データ源、アロケーション、バウンダリー情報などについて公表が義務付けられている。
 削減についても「Code of Good Practice」に記載されているが、削減目標を数値で定めているわけではなく、ベースライン排出量の考え方のみを定めている。削減できなかった場合は、ラベル使用ができなくなるが、悪天候など不可抗力があった場合、大きな削減を過去にした場合には積み立てルールがあり、そのような場合には許容されるとしている。

▼ 公表データのテンプレート

1 背景情報
1.1
会社名
1.2
準拠した仕様書等
1.3
独立または第3者検証機関名およびその認定照会
1.4
検証日
2 気候変動に関する企業方針
2.1
企業方針と戦略
3 製品排出量の公表 : 補助情報
3.1
PAS2050に準拠して評価した製品
3.2
製品のライフサイクル全排出量
3.3
任意 : ライフサイクル各フェーズにおける製品GHG排出量
3.4
任意 : 異なるシナリオに基づいた場合のGHG排出量
3.5
3.2-3.4の評価日
4 製品排出量の削減 : 補助情報
4.1
PAS2050に準拠して評価した製品
4.2
ベースライン排出量
4.3
ベースライン評価日
4.4
製品のGHG削減量
4.5
削減期間
4.6
製品のGHG排出量削減のために行われている(または計画されている)取り組み
4.7
積み立てられた結果の説明
4.8
ベースライン更新の説明
4.9
不可抗力の影響説明
5 バウンダリーとデータ : 補助情報
5.1
製品番号
5.2
排出量評価のバウンダリーとバウンダリー決定における考え方
5.3

評価に使用した2次データのソース

6 結果についての注意書き

パイロットプロジェクトについて

 パイロットプロジェクト参加企業は、公募によって募集し200社以上の企業が応募した。そのうち、一定のルール(セクターのミックス、企業の大小、サプライチェーン各所、向上的な企業など)に従って、選考を行った。2008年2月時点でWalkers社(ポテトチップス)、Boots社(シャンプー)、Innocent社(ジュース)、Halifax社(ウェブ口座)、Continental Clothing社(Tシャツ)など20社75品目についてのパイロットプロジェクトが実施されている。

 これらプロジェクトの参加は基本的には企業の自己負担で行っており、CFP算定は各社内の専門家、またはコンサルを雇って行っている。カーボントラスト社はテンプレートデータ、算定に関するアドバイス、ラベルの検証、付与(カーボンラベル社)などのサービスを有償で行っている。

▼ パイロットプロジェクト参加企業 - (出典)Product Carbon footprinting new business opportunity, カーボントラスト社
パイロットプロジェクト参加企業

 パイロットプロジェクトでは、さまざまな表示媒体を利用してCFPの表示を行っている。例えば、B2Bの商品では、商品カタログ、小売では商品棚、ウェブサービスでは会員ウェブ上にCFPを表示するなど各社それぞれの形態に応じた表示媒体を利用している。
 ラベルの使用料はそれぞれの媒体ごとにカーボントラスト社とのライセンス契約により発生する。また、認証については、UKAS(イギリスの認定機関)が現在認証期間5-6社と共同でCFP制度における認証スキームを検討中。2009年11月までに公表予定としている。

▼ 表示媒体について - (出典) Product carbon footprinting : new business opportunity, カーボントラスト社

Sector
Company
Products
Label display
Goods
Business(B2B)
Continental Clothing
T-shirts
Sales catalogue,website
Consumer(B2C)
Pepsi/Walkers
Crisps
On-pack
innocent
Smoothies
Website
Retail
Boots
Botanics shampoo
Point-of-sale display
Tesco
Detergent
Potatoes
Orange juice
Light bulbs
On-pack
Services
Consumer(B2C)
HBOS/Halifax
Web Saver bank account
Website


▼ カタログへの表示(Continental Clothing社のTシャツ)
(出典)Continental Clothing社ホームページ
▼ パッケージへの表示(Walkers社ポテトチップ)
(出典)Working with PepsiCo and Walkers,カーボントラスト社

カタログへの表示(Continental Clothing社のTシャツ)・パッケージへの表示(Walkers社ポテトチップ)

▼ ポスターへの表示(小売Boots社シャンプー)
(出典)Boots社CSR報告書
▼ ウェブサイトでの表示(ウェブ金融サービスHalifax社)
(出典)Working with HBOS, カーボントラスト社

ポスターへの表示(小売Boots社シャンプー)・ウェブサイトでの表示(ウェブ金融サービスHalifax社)

▼ ウェブサイトと商品棚への表示(Innocent社ジュース) - (出典)Innocent社 ホームページ
ウェブサイトと商品棚への表示(Innocent社ジュース)

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